Since 08.02.27   舞(乙)-HiMEの二次創作SSを投稿。なつき×静留、ナツキ×シズルが中心。
「ただいまー」


ヘルメットと鍵を置いて、いつものように呼び掛ける。
リビングからは物音ひとつしない。
あれ?電気は点いてる・・よな。
普段ならもう、私を玄関まで出迎えに来てくれているはずなのに。


「静留ー?」


ドアを押しながら、もう一度呼び掛けようとして黙った。
静留がローテーブルに伏せるようにして寝ている。
珍しいな。私にはよくあることだけど。『こんなとこで寝はると風邪ひきますえ』なんて言われて。
つい何日か前の膝枕が思い出されて、少し顔が熱くなった。

傍らに転がるのは確か、大学の本だ。
ページの端が少し折れてしまっている。一般教養用で然程興味がない内容、とは静留の弁だが、とはいえ文字の書かれた物をぞんざいに扱う彼女ではない。
取り落として眠るほど疲れていたのか。


本を拾って脇に置き、起こそうと静留に手を伸ばして・・そのまま止めた。
制服の上着を脱いで、そっと肩に掛ける。

このまま眠っていてくれれば良いのにと。
なんとなく、そう思ったから。


ひどく無防備な姿。あどけない寝顔。
改めて気付く。
いや、こういうときにしか気付くことができない私が駄目なのだろう。
静留がひとつだけ年上の、十代の女の子でしかないこと。


整ったその顔を眺める。
眼の下には、俄には判らないが隈があるようだ。
昨日はすぐに寝付いたように見えたのに。眠りが浅かったのだろうか。

私のせいか?静留。
私がまた、お前を不安にさせているだろうか。



静留は決して簡単じゃない、と舞衣は言う。
そんなことは私だって、初めから解っていたつもりだった。

こいつは、感情を押し殺すのが得意などというレベルではない。
あれほどの激情を。自分への底知れぬ愛情と欲情を、胸にしまって微笑み続けていたのだから。
だからこそ、ちゃんと自分が気づいてやると。付き合い始める時に心に誓った。


だが。

お前は何も解っていなかったのだと、頭をがぁんと殴られるような
お前はいったい何を見ていたのかと、自分を殴りつけてやりたくなるような
そんな、出来事があった。



それは「あのとき」のこと。
私は、そしてきっと静留も、決して忘れることのない、ある夜のこと。



彼女が眼を覚ますまで。いま一度、思い起こすことにしよう。

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お茶がふたつ、ローテーブルの上で湯気を立ち上らせている。
ソファーに並んで座るふたり。
夕食を終えた後は、こうしてリビングで一緒にのんびりと過ごすのが、いつからか習慣になった。

別に何か同じことを共にするわけではない。
なつきの手には小型ゲーム機、静留の手には大学の指定図書。
とはいえ、なつきがこうして隣に座っていてくれるだけで、自分が嬉しく思わないわけがない。
そう思いながら、彼女の手元を見やった静留は、首を傾げた。


握られたゲーム機の画面が真っ暗なのだ。
スリープしているのかと思ったが、そういえば、さっきから一度もボタンを叩く音がしていない。いつもは画面を食い入るように覗き込んで、壊れるんじゃないかという程むきになってボタンを連打しているのに。
スリープしているのはどうやら、なつきのほうだ。

「なつきー?」

手をひらひらと振ってみせる。
眼は開いているものの、一向に反応がない。心ここにあらずといった様子。

あらあら。どないしたんやろね。

そっとしといてやってもいいが、それではつまらない。
さて、耳に息を吹きかけようか、いきなり頬にキスしてあげようか。


静留はふっと微笑んで、その肩をゆっくりと自分のほうへ引き寄せた。

拍手[42回]


静留が、自然な笑顔を見せるようになったこと。
気付いたのはいつだったろう。
そのとき初めて私は、あいつが今まで、その表情を笑顔という仮面の下に巧みに隠していたことにもようやく気付いた。

自分の鈍さが、不甲斐なさが、ひどく呪わしく思えたのは事実だが。
しかし、静留だからこそ、ああやって暴走してしまうまで誰にも気付かれずに、感情を隠すことが出来てしまったのだろうとも思う。
完璧もここに極まれり、だ。
すぐに赤くなったり青くなったりする私と、足して二で割れば丁度良かろうに。


思えば避けていたのか、最近は以前のように際どい冗談を言うようになったし。
勝手に風呂に入ってきたりもする・・・それ以上触れたりはしてこないけれど。
余裕がある。そんな感じだ。

それはやっぱり、あのときからだろうか。



『愛してます』とあなたは言う。
本当に嬉しそうに。
頬を桜色に染めて。

『好きだ』と稀に、私も答える。
囁くような声で。
顔を隠すようにして。


愛してると、好きとの間には。どのくらいの差があるのだろう。
ようやく、自分の『好き』がかたちを成してきたばかりなのに。

何となしに、掌を見つめた。


「いてっ」


頬杖をついていた方の腕に何かが直撃した。
何も書いていないノートに落ちたのは、消しゴムの大きな欠片。

・・そういえば授業中だった。今は数学だったか、古典だったか。
訝しむ教師に、何でもありません、と短く答えてから首をひねる。見回す必要はない。
こんなことをしてくる奴の心当たりは、ひとつしかないから。


果たして、斜め後方の席で小さく手を掲げる舞衣と眼が合った。

拍手[40回]


玄関で暫く呆けてしまった。


お台所で顔を紅ぅして行ってしまわはったから。
今日はあんまり触れへんほうがええんやろか思て、ここでは手をよう出されへんかった。

そしたら、なんやじぃっとうちのこと見つめはって。
あないなこと言うてくれはるやなんて。・・かなんわ、ほんまに。

『好き』

まだ数えるほどしか彼女の口が紡いでくれたことのない、宝物のようなその言葉。
それだけで生きていけるような心地さえする。

残響を閉じ込めようとでもするように、耳にそっと手を添えた。

拍手[37回]


少し前から予告していた通り、久しぶりに少々長い話を書きます。
テーマとしては、ずっと書こうと思いつつ書けなかったものです。うまく形になってくれると良いのですが。

完結まで暫く時間がかかるかもしれませんが、まずは1話目を。
よろしければどうぞお付き合い下さい。

なつき視点から始まります。

拍手[37回]


ちはやふる、詩暢がついに喋りましたね。
ずっと楽しみにしていました。
のっけから声が高くてびっくりした。
中の人が進藤さんじゃなくて残念だったけれども。あれはあれで、結構合っていたんじゃないかと思います。
今後も楽しみだなぁ。

東京事変が解散と聞いてショック。
だから紅白あんな無理な登場をしていたんでしょうか。
林檎の曲より事変の曲のほうが長かったし。
一度もライブに行けていないので、ラストライブこそは行きたいです。しかしチケット申込みページがアクセス集中しとる・・・倍率がいつも以上に高そう。


さて、次のSSはぼちぼち書き進めております。6話くらいになるかと。
間の話でちょっと行き詰まってるので、立て続けには出せませんが、第1話を今週末に上げる予定です。
お時間があれば、よろしくどうぞ。

拍手[8回]


明けましておめでとうございます。
今年ものんびりと書きますが、どうぞよろしくお願いいたします。

久しぶりに長編を書こうとしています。これまで何度かリクエストをいただきながら、お答えできなかった話も含めて。もう少し時間がかかりそうですが。
ただ、それを書いてしまうと、自分の中で一区切りが付くので・・・次の話はもう浮かばないのではとも思っています。
解りませんが、まぁ、どう転んでも温かく見守っていただきたいというのは我が儘でしょうか。

下記、拍手お返事です。いつもありがとうございます。


>静なつバカさん
いやー、持って帰ったらどうなるでしょうね。
私が書くと静留はどうもヘタレてしまうので・・・しょんぼりしていてなつきがおろおろするような感じでしょうか。ふくらまない(笑)

>にゃおさん
ご実家いいですね。ゆっくりできましたでしょうか。
そうですね、奈緒も私の中ではお人好しなイメージがあります。
なつきは本当はもっと優しくないんじゃないかとも思いますが(笑)

>匿名の方
はじめまして、でしょうか。コメントありがとうございます。
拍手は以前別のサービスを使っていたんです。今の拍手回数は、拍手お礼として書いていたSSを移行してからの表示ですので、最近の記事に偏っているんですよ。
古い記事にもちらほらあるのは、奇特な方が読み返して下さっているからですね。ありがたいことだと思っております。

拍手[10回]


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